ビジョンブックとは?

企業の理念や未来像を社内外へ伝える冊子のつくり方


「会社のビジョンを社員に伝えているつもりなのに、なかなか浸透しない」「経営理念やミッションはあるものの、日々の仕事とのつながりが見えにくい」。そんな課題をきっかけに、ビジョンブックの制作を検討する企業が増えています。 ビジョンブックとは、企業理念やミッション、ビジョン、バリューを掲載した冊子というだけではありません。


自社がどこから来て、何を大切にし、これからどこへ向かうのか。その背景にある考え方やストーリーまで含めて編集し、社員や顧客、採用候補者、パートナーなどと共有するためのブランドツールです。 大切なのは、冊子のデザインから始めないことです。まず企業の中にある言葉や思いを整理し、未来への問いを立て、関係者との対話を重ねながら「自分たちはどんな会社でありたいのか」を形にしていきます。 ここでは、ビジョンブックの役割から構成、制作プロセス、活用方法までを順番に整理します。

What Is a Vision Book?

1.ビジョンブックとは?企業の未来を共有するための冊子

ビジョンブックとは、企業が目指す未来や大切にしている価値観を、言葉や写真、グラフィックなどで伝える冊子です。 企業理念やミッション、ビジョンを掲載するだけではなく、「なぜその考え方を大切にしているのか」まで伝えることがポイントです。


創業の背景や会社の歴史、社員の声、顧客との関係などを通して、「これまで・現在・これから」を一つのストーリーとして整理することで、抽象的なビジョンを具体的なイメージとして共有しやすくなります。 また、制作プロセスそのものをインナーブランディングに活用することもできます。社員へのインタビューやワークショップを通じて「自分たちらしさ」や「これから目指す姿」を考え、その言葉を冊子に残す。 そうすることで、ビジョンを経営者だけの言葉ではなく、会社全体で共有する共通言語へ育てていくことができます。

  • ビジョンブックは、企業理念や未来像を言葉とデザインで共有するための冊子です。

  • 理念やビジョンそのものだけでなく、その背景や理由まで伝えることがポイントです。

  • 会社案内が現在を説明する媒体なら、ビジョンブックは過去・現在・未来をつなぎます。

  • 経営者だけでなく社員との対話を取り入れることで、会社らしい言葉を見つけやすくなります。

  • 制作プロセスそのものを、理念浸透やインナーブランディングの機会として活用できます。

Three Reasons
2.ビジョンブックをつくる3つの理由

ビジョンブックを制作する目的は企業によって異なります。 周年、事業承継、経営理念の刷新、組織拡大、新規事業、採用強化などがきっかけになることもあります。 その中でも、大きく分けると「未来を共有する」「判断基準を揃える」「企業らしさを伝える」という3つの役割があります。

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    #01

    会社が目指す未来を共有する

    企業が成長すると、経営者と社員との距離が少しずつ広がっていきます。 創業当初は日常の会話によって共有できていた考え方も、社員数や拠点が増えると伝わりにくくなることがあります。 そこで、企業理念やビジョンを冊子として整理し、「なぜこの会社が存在しているのか」「これからどんな価値を生み出したいのか」「社会に対してどのような役割を果たしたいのか」といった未来像を共有します。

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    #02

    日々の仕事に使える判断基準をつくる

    企業理念やバリューは、額縁に入れて掲示するだけでは十分に機能しません。 本来は、社員が仕事で迷ったときに立ち返る判断基準になるものです。 例えば、「どんな顧客を大切にするのか」「商品開発で何を優先するのか」「利益と顧客体験がぶつかったとき、どう考えるのか」といった場面です。 ビジョンブックでは、理念やバリューを具体的なエピソードや社員の言葉と結びつけることで、抽象的な言葉を日常の行動へ近づけることができます。

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    #03

    会社らしさを社外へ伝える

    ビジョンブックは、社内向けだけに使うものではありません。 採用候補者、顧客、取引先、金融機関、地域、パートナーなど、会社と関わるさまざまな人へ企業の考え方を伝えることができます。 商品やサービスだけではわからない、「どんな考え方で事業をしている会社なのか」「どんな未来を目指しているのか」「どんな人たちが働いているのか」を伝えることで、企業ブランディングや採用ブランディングにもつながります。

Open Questions
3.良いビジョンブックは「答え」だけではなく余白をつくる

ビジョンブックをつくるとき、最初から立派なビジョンをつくろうとすると、言葉が抽象的になりすぎることがあります。

「豊かな社会をつくる」「未来を創造する」「人々の幸せに貢献する」どれも間違いではありませんが、それだけでは「自分たちの会社だからこそ目指す未来」が見えにくくなります。 そこで有効なのが、答えを決める前に問いを立てることです。例えば、


・私たちは、誰のどんな未来に関わりたいのか

・10年後も変わらず大切にしたいことは何か

・社会から自分たちがなくなったとき、誰が何に困るのか

・自社にしかできない役割は何か

・次の世代へ何を残したいのか


こうした問いについて、経営者だけではなく、社員や顧客、取引先などさまざまな人と対話します。 企業規模が大きくなるほど、一つの言葉に全員の考えを集約することは難しくなります。 その場合、「一つの正解を決める」ことだけを目的にしなくても構いません。 共通する価値観を探したり、複数の視点を並べたり、一つの問いに対するさまざまな答えを集めたりすることで、企業全体の未来像が浮かび上がることもあります。


例えば、ビジョンブックの中に社員や有識者の言葉を複数掲載する方法があります。 一つひとつの言葉だけを見ると個人の意見ですが、それらが集まることで、会社が大切にしたい価値観の輪郭が見えてきます。 このように、ビジョンブックは必ずしも企業から読者へ一方的に「答え」を伝える媒体である必要はありません。 読んだ人が、「自分ならどう考えるだろう」「自分の仕事はこの未来とどうつながっているだろう」と考えられる余白を残すことで、ビジョンへの参加意識が生まれます。

Vison Book Contents
4.ビジョンブックに入れたい内容

ROOTS|会社の原点をたどる

最初に扱いたいのは、企業がどのように生まれ、何を大切にして歩んできたのかという背景です。 創業のきっかけ、事業を始めた理由、これまでの転機、顧客との印象的な出来事、困難を乗り越えた経験などを振り返ります。


ここで大切なのは、単なる沿革や年表にしないことです。 例えば、「なぜその事業を始めたのか」「大きな転機で、何を基準に判断したのか」「長い時間が経っても変わらず受け継がれている考え方は何か」 といった視点で歴史を読み直します。


古い写真、商品、図面、社内報、広告、手紙なども、会社らしさを発見する手掛かりになります。 過去を振り返る目的は、懐かしむことではありません。 現在の企業文化や価値観が、どこから生まれてきたのかを理解することです。

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IDENTITY|今の会社らしさを見つける

次に整理したいのは、現在の企業がどのような価値を生み出しているのかということです。 事業内容や商品・サービスだけではなく、「顧客から何を評価されているのか」 「社員は自社のどんなところに魅力を感じているのか」「仕事をするとき、自然と大切にしていることは何か」 などを掘り下げます。


企業が自分たちで認識している強みと、顧客や取引先から見た強みが異なる場合もあります。 そのため、経営者だけではなく、社員へのインタビューやワークショップ、顧客やパートナーからの声など、複数の視点を集めることも有効です。


例えば、企業側では「技術力」が最大の強みだと思っていても、顧客からは「相談すると最後まで一緒に考えてくれること」が評価されているかもしれません。 こうした対話を通じて、普段は当たり前になっていて気づきにくい自社らしさの輪郭を見つけていきます。


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FUTURE|これから大切にしたい意志を描く

最後に考えるのは、これから企業がどのような方向へ進んでいきたいのかという意志です。 ここでは、売上目標や事業計画だけではなく、「どんな社会をつくりたいのか」「顧客にどんな変化を届けたいのか」「次の世代にどんな会社を残したいのか」 といった、少し長い時間軸で未来を考えます。


未来について考えるとき、最初から一つの美しい言葉にまとめる必要はありません。 社員や経営者がそれぞれの立場から未来への問いに答え、その言葉を集める方法もあります。 複数の意見の中に共通する価値観が見つかれば、それがビジョンやブランドコンセプトにつながることもあります。重要なのは、未来を「予測する」ことではなく、自分たちはどんな未来に向かいたいのかという意志を示すことです。


一つのストーリーとしてつなげる ROOTS、IDENTITY、FUTUREは、それぞれ独立した情報ではありません。 これまで何を大切にしてきたのかを振り返ることで、現在の会社らしさが見えてきます。 そして、その中から未来にも残したい価値を選び取ることで、これから目指す方向が具体的になります。 ビジョンブックでは、この流れを一つのストーリーとして編集することで、単なる理念集ではなく、「なぜ私たちはこの未来を目指すのか」が伝わる冊子にしていくことができます。

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Design Process
5.ビジョンブックをつくる5つのステップ

ビジョンブック制作では、最初から原稿やデザインをつくるのではなく、会社の中にある考えを集め、整理し、言葉にし、それから冊子へ落とし込んでいきます。 企業規模や目的によって工程は変わりますが、基本的には次の5つのステップで進めると考えやすくなります。



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  • STEP 1|制作の目的と背景を整理する


    最初に「なぜ今、ビジョンブックをつくるのか」を整理します。 周年、事業承継、組織拡大、理念刷新、採用強化、リブランディングなど、背景によって冊子の役割は変わります。

    [確認したいこと]

    ・ビジョンブックをつくるきっかけは何か

    ・誰に読んでもらいたいか

    ・読後にどんな状態になってほしいか

    ・社内向けと社外向け、どちらを重視するか

  • STEP 2|会社の中にある言葉や価値を集める


    次に、企業の歴史や現在の価値観を調査します。 経営者だけではなく、社員、顧客、OB、取引先などへのインタビューを行う方法もあります。 企業理念や既存資料だけでは見つからない、日常の中にある「会社らしさ」を集めていきます。

    [確認したいこと]

    ・創業以来、大切にしてきたことは何か

    ・社員が感じている自社の強みは何か

    ・顧客から評価されていることは何か

    ・会社の転機になった出来事は何か

  • STEP 3|未来への問いとビジョンを整理する


    集めた情報をもとに、これからの企業について考えます。 最初から美しい言葉にまとめる必要はありません。 ワークショップや対話を通じて問いを立て、複数の意見を集めながら未来像を探します。

    [確認したいこと]

    ・10年後、どんな会社でありたいか

    ・社会にどんな価値を提供したいか

    ・次世代へ何を残したいか

    ・これから変えることと、変えないことは何か

  • STEP 4|編集・デザインで一つのストーリーにする


    言葉が整理できたら、冊子の構成をつくります。 すべての情報を掲載するのではなく、読者の理解が深まる順番に編集します。 写真、イラスト、グラフィック、タイポグラフィ、紙、製本なども、企業の世界観を伝えるための要素です。 

    [確認したいこと]

    ・冊子全体のストーリーは自然につながっているか

    ・言葉とビジュアルが同じ方向を向いているか

    ・社員が自分事として読める内容になっているか

    ・企業らしいトーン&マナーになっているか

  • STEP 5|冊子を「配って終わり」にしない


    ビジョンブックは、完成した瞬間よりも、その後どのように使うかが重要です。 入社時の研修、社員との1on1、経営方針発表、採用説明会、顧客との商談など、さまざまな場面で活用できます。 また、Webサイト、採用サイト、会社案内、社内イベントなどへ内容を展開することもできます。

    [確認したいこと]

    ・社員がビジョンについて話す機会をつくれているか

    ・採用や営業でどのように活用するか

    ・Webや会社案内と内容がつながっているか

    ・数年後に見直す機会を設けるか

まとめ


ビジョンブックは、企業理念やビジョンをきれいな冊子にまとめることだけが目的ではありません。 会社がこれまで何を大切にしてきたのか。 現在どのような価値を生み出しているのか。 そして、これからどこへ向かいたいのか。 それらを改めて考え、言葉にし、社員や顧客、パートナーと共有するための媒体です。


第1章では、ビジョンブックが未来を共有する冊子であることを整理しました。 第2章では、未来の共有、判断基準づくり、社外へのブランド発信という3つの役割を紹介しました。 第3章では、最初から一つの答えを決めるのではなく、「問い」を通じて会社の未来を考える方法について触れました。 第4章では、過去・現在・未来という3つの時間軸からビジョンブックを構成する考え方を整理し、第5章では実際の制作を5つのステップに分けました。


まず取り組みやすいのは、「10年後も、自分たちが変わらず大切にしていたいことは何だろう?」と社内で問いかけてみることです。 そこから出てくる言葉には、企業理念や経営計画だけでは見つからない、自社らしい価値観が含まれているかもしれません。


ビジョンブック制作では、完成された答えを最初から持っている必要はありません。 むしろ、まだ言葉になっていない考えを集め、対話しながら形にしていくプロセスに大きな意味があります。 MERRY BEETLEでは、冊子のデザインだけではなく、企業の歴史や経営者・社員へのヒアリング、ワークショップ、ブランドコンセプトやビジョンの整理など、「何を載せるか」を考える前の段階からビジョンブック制作をお手伝いしています。


「会社の未来を整理したいけれど、どこから始めればよいかわからない」「経営者の中にある考えを、社員と共有できる形にしたい」といった段階でも、お気軽にご相談ください。


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Writer

1986年大阪生まれ。神戸大学卒業後、nendoを経て2016年、MERRY BEETLE設立。モノ・サービスや企業のブランディングにおける、デザイナーと企業の共通言語をつくるべく活動している。好きなものはクワガタ、カブトムシ、ウルトラマン(特にA)、そして焼きそば。


株式会社メリービートル 代表取締役

一般社団法人TOGU 代表理事
堺デザイン協会 理事
大阪デザインセンター(ODC) 評議員

大阪府地域資源活用・地域連携プランナー

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