自社らしさを言葉にする

ブランドコンセプトの作り方


ブランドコンセプトは、企業や商品の「らしさ」を一言で説明するための大切な軸です。しかし、いざ自社のコンセプトを考えようとすると、「何を書けばいいのか分からない」「きれいな言葉にはなるが、自社らしくない」「社内で意見がまとまらない」といった壁にぶつかります。 ブランドコンセプトは、広告のキャッチコピーのように人目を引く言葉をつくることが目的ではありません。誰に、どのような価値を届けるのか。その企業が何を大切にし、どのような選択をしていくのか。事業やデザインを判断するための基準となる言葉です。 この記事では、ブランドコンセプトの役割、良いコンセプトの条件、企業理念やキャッチコピーとの違い、実際につくるための5ステップを整理します。

Brand concept

1.ブランドコンセプトとは何か

ブランドコンセプトとは、企業や商品が「どのような存在として選ばれたいか」を簡潔に示す考え方です。単なる説明文ではなく、事業、商品開発、コミュニケーション、デザインなどを考えるときの判断基準になります。 例えば、新しい商品を企画するときに「売れそうだから」という理由だけで進めるのではなく、その商品がブランドコンセプトに合っているかを確認する。Webサイトをつくるときも、「流行しているデザインだから」ではなく、自社が届けたい価値に合っているかを判断する。そうした役割を果たします。


良いコンセプトは、社外へ伝えるためだけでなく、社内の意思決定を揃える力を持っています。企業規模が大きくなり、関わる人が増えるほど、「自分たちらしさ」を共有する言葉の重要性は高まります。 ブランドコンセプトが曖昧なままだと、制作物をつくるたびに判断基準が変わります。ある担当者は高級感を重視し、別の担当者は親しみやすさを重視する。広告では先進性を伝えているのに、採用では安定感だけを訴える。その結果、接点ごとの印象がバラバラになります。


コンセプトは、このような判断のズレを減らすための共通言語です。短い言葉にまとめることが目的ではなく、「その言葉を起点に複数の人が同じ方向へ判断できる状態」をつくることが目的です。その意味では、ブランドコンセプトはクリエイティブのためだけではなく、経営と現場をつなぐ道具でもあります。

  • ブランドコンセプトは、企業や商品がどのような存在として選ばれたいかを示し、判断を揃える共通言語です。

  • 良いコンセプトには、自分たちらしさ、顧客にとっての価値、実際の判断に使えることの3条件が必要です。

  • 企業理念やMVV、キャッチコピーとは役割が異なり、ブランドコンセプトは市場との関係を整理する軸になります。

  • 歴史・原点、顧客からの評価や強み、未来への意思を掘り下げることで、自社らしいコンセプトの材料を集めます。

  • 情報収集から価値抽出、顧客との接続、言葉への集約、事業とデザインでの検証まで5段階でつくります。

Three Points
2.良いブランドコンセプトに必要な3つのポイント

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    #01

    自分たちらしいこと

    どこかで聞いたことのある言葉ではなく、自社の歴史や強み、文化から生まれていることが大切です。「挑戦」「信頼」「未来」のような一般的な言葉を使う場合でも、なぜ自社にとってその言葉が重要なのかまで説明できる必要があります。

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    #02

    顧客にとって価値があること

    自社が言いたいことだけではコンセプトになりません。その価値が、顧客や社会にとってどのような意味を持つのかを考えます。企業らしさと顧客価値が重なる場所に、強いブランドコンセプトがあります。

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    #03

    判断に使えること

    コンセプトはポスターに掲げる言葉ではなく、日々の判断に使える必要があります。新商品、採用、営業、デザインなどで迷ったとき、「この選択は自分たちらしいか」を判断できる言葉になっているかを確認します。

Words and roles
3.企業理念・MVV・キャッチコピーとの違い

企業にはさまざまな言葉があります。

企業理念は、会社が長く大切にする根本的な考え方。パーパスは存在意義、ビジョンは目指す未来、ミッションは果たす役割、バリューは行動の価値基準を示します。 一方、ブランドコンセプトは、それらの考えを市場や顧客との関係に引き寄せ、「どのような価値を持つブランドとして認識されたいか」を整理する役割があります。キャッチコピーやタグラインは、その考えを外部へ伝えるための表現です。


これらは明確に分けなければならないものではありません。企業によっては、パーパスがブランドコンセプトに近い役割を果たすこともあります。大切なのは、用語を増やすことではなく、それぞれの言葉が何のために存在するのかを社内で共有できることです。 言葉を整理するときに注意したいのは、用語の正解探しに時間をかけすぎないことです。「これはパーパスなのか、ミッションなのか」「ブランドプロミスを別に設けるべきか」と議論するうちに、本来考えるべき自社の価値が置き去りになることがあります。


企業ごとに必要な言葉の数は違います。創業者の理念がすでに強く浸透している会社なら、無理に新しいMVVを増やす必要はありません。反対に、事業が増え、社員数が増え、共通の方向性が見えにくくなっている企業では、複数の言葉を役割ごとに整理する意味があります。形式ではなく、社内外で使えることを優先しましょう。

Discovery
4.コンセプトをつくるために掘り下げたい領域

歴史・原点|なぜこの会社が存在するのか

創業のきっかけ、これまで乗り越えてきた出来事、創業者や経営者が大切にしてきた判断を振り返ります。長く続いている会社ほど、日常では意識されなくなった価値が歴史の中に隠れています。


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強み・評価|なぜ顧客から選ばれているのか

自社が強みだと思っていることと、顧客が評価していることは必ずしも同じではありません。営業担当者や顧客へのヒアリングを通じて、実際に選ばれている理由を探ります。 顧客へのヒアリングでは、「当社の強みは何ですか」と直接聞くだけではなく、「最初に依頼したきっかけ」「他社と比較して決め手になったこと」「継続している理由」など具体的な経験を聞くと、本質的な価値が見えやすくなります。


社内では当たり前になっている対応の早さや、細かな相談への柔軟さが、顧客にとって大きな選択理由になっていることもあります。 こうして外部の視点を加えることで、自社が思い込んでいる強みと、実際に市場で評価されている強みのズレを確認できます。コンセプトは理想だけではなく、現実に根を持っていることが重要です。

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未来・意思|これからどこへ向かうのか

ブランドは過去を整理するだけではありません。今後挑戦したい事業、出会いたい顧客、採用したい人材など、未来への意思も必要です。過去の強みと未来の方向性がつながると、コンセプトに推進力が生まれます。


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Making Process
5.ブランドコンセプトをつくる5つのステップ




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  • STEP1|情報を集める


    歴史、商品、顧客、競合、社員の声など、企業を理解するための材料を集めます。経営者だけでなく複数の立場から情報を得ることが大切です。

  • STEP 2|自社らしい価値を抽出する


    集めた情報の中から、繰り返し出てくる考え方や強みを探します。顧客から評価されていること、自社で誇りに感じていることなどを整理します。

  • STEP 3|届けたい相手と価値を結ぶ


    現状と未来をつなぐキーワードやブランドコンセプトを設計します。ここがデザイン提案を評価する共通の物差しになります。関係者間で認識を揃えてから制作へ進みます。


    [確認したいこと]

    ・自社を一言で表すと何か

    ・競合との違いをどう伝えるか

    ・デザイン判断の基準を共有できているか


  • STEP 4|短い言葉に集約する


    説明文を何度も削りながら、判断に使える核となる言葉へまとめます。無理に一単語にする必要はありません。意味が共有できることを優先します。

  • STEP 5|事業とデザインで検証する


    完成したコンセプトを、新商品、採用、Web、ロゴなど具体的な場面に当てはめます。判断に使えない場合は、再度言葉を見直します。 完成したコンセプトは、一度社内で声に出して使ってみることも大切です。「この新商品はコンセプトに合っているか」「この採用メッセージは自分たちらしいか」と具体的な判断に当てはめると、抽象的すぎる言葉や、逆に範囲が狭すぎる言葉に気づけます。実際に使いながら磨くことで、コンセプトは生きた判断基準になっていきます。

まとめ


ブランドコンセプトは、格好良い言葉をつくるためのものではありません。企業の中にある価値を整理し、顧客にとっての意味と結びつけ、未来の意思決定に使える形へまとめるものです。 MERRY BEETLEでは、経営者の想いだけでなく、社員や顧客の視点も交えながら、その企業にすでに存在している価値を掘り起こすことを大切にしています。ブランドコンセプトをつくりたいが何から整理すればよいか分からない、自社らしい言葉が見つからないという場合も、対話から一緒に整理していきます。


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Writer

1986年大阪生まれ。神戸大学卒業後、nendoを経て2016年、MERRY BEETLE設立。モノ・サービスや企業のブランディングにおける、デザイナーと企業の共通言語をつくるべく活動している。好きなものはクワガタ、カブトムシ、ウルトラマン(特にA)、そして焼きそば。


株式会社メリービートル 代表取締役

一般社団法人TOGU 代表理事
堺デザイン協会 理事
大阪デザインセンター(ODC) 評議員

大阪府地域資源活用・地域連携プランナー

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